2012年07月31日(火曜日)
原発の事故によってこれまで立ち入りが禁じられていた福島県南相馬市が、4月16日より警戒解除になりました。今回私は、新たなボランティア活動として、この福島県南相馬市を訪ねました。一年以上誰も入ることがなかった土地に足を踏み入れ、これは天災というよりむしろ人災ではないかと、言葉では言い表すことのできない強い衝撃を受けました。
今回の瓦礫撤去では、今までとは異なり、瓦礫の撤去と同時に御遺骨の捜索も依頼されました。あの大地震で、着の身着のまま避難を余儀なくされ、そのまま自宅にも帰れない日が今年の4月16日まで続いたことを思うと、胸のつまる思いがしました。この地で亡くなられた方も多数おられたことと思われ、心を込めて法要を執り行い諸霊位の仏道増進坐宝蓮華成等正覚を祈念致しました。
作業当日、市役所の方から作業手順の説明を受けました。私達は、なんとしても御遺骨をひとかけらでも良いから探し出して、ご家族にお返したいと願って現場に入りました。私達のグループのだれもが、何度もボランティアを重ねてきた猛者で、場所は違うとはいえ、被災地の瓦礫撤去ではエキスパートです。ご家族の願いを何としても実現するぞと、共に力を合わせ、精一杯がんばりました。午前中の作業が終わりお昼の休憩に入ると、いきなり雨が降り始めました。作業が中止になるのではないかとひやひやしていた所、皆の願いが通じたのか、休憩時間後には雨も止んで、午後も作業を続けることができました。瓦礫の撤去の作業は無事終了しましたが、結局、ご家族に御遺骨をお渡しする事はかないませんでした。
私が今回福島に行ったのは七夕の前で、所々で笹につるされた短冊を目にしました。それらの短冊には、「生れ故郷で生活したい」等々、私達にとっては、日常当たり前の事として享受しているものばかりが書かれているのですが、その事が叶わないのが現実である被災者の方々の気持ちを考えると、いたたまれない気持ちに襲われ、帰りの車内で、そして今でも、今回目にした短冊が頭から離れることがありません。私達には御本尊という祈る対象があり、お参りできるお墓もあって御先祖に御回向を捧げることができ、帰る家もあります。今この国には、これらの事が何一つ叶わない方々がたくさんいるという現実を決して忘れてはならないと思います。被災地の方々は、こんなに恵まれた環境にいる私達にも、妬みの心は微塵もなく、いつも温かく迎えいれ、そして温かく見送ってくれます。人間の美しさにふれた思いで深い感動を感じます。復興への道のりは遥かであります。政治に関る方々がもっと本気になって取り組んで頂きたいと切に願います。政治家の方々は、道路を通す為には平気で山などを切り崩しながら、本当に困っている人々のためには一向に力を尽くしません。いつまでも仮設住宅で生活をせざるを得ない方々への土地の保障問題も、今も問題が積み残されたままです。七夕の短冊に書かれたささやかながらも切実な願いの一つ一つを重く受け止め、それらの実現に向け微力ながら精一杯頑張る事を御誓い申し上げます。
国柱会賽主 田中壮谷