聖訓に学ぶ

2024年03月01日(金曜日)

我は法を説けば人尊教するなんど思いて、人に勝れんと思いて今生を渡り、衆生を助けず父母を救うべくき心なき人を、食法餓鬼とて法を食らう餓鬼と申すなり。(『四条金吾殿御書』より)

 今の時代、自分が正しいと思うことを言うのにも勇気と一工夫が必要です。間違っている人を正すために言葉を掛けようとするときにも、その後の反応が怖くなります。善いことは善い悪いことは悪いと素直に忠告しようとした場合でも、人の評価を強く意識している人が聞けば、あの人はいい子ぶって言っているのだろうと誤解して逆恨みをして正義を行う人を逆にいじめの対象にしたり、その内容がSNSなどで投稿された場合、第三者はその誤解を更に拡大しがちです。以前とは違って便利な世になりましたが、逆に窮屈になってしまいました。正義を実行する事が難しい時代です。そんな誤解を少しでも少なくするためには、ぬくもりのある心のこもった交流こそ大事だと思います。そのためにも、まずじっくりと自身の五感を磨いて感性を高めることが大切ではないかと思います。
 報道によれば年間の自殺者が、昨年も二万人を超えて一向に減る気配がなく、本当に悲しいことです。自殺の原因は様々だと思いますが、過酷な競争社会にあって、人に勝れんと思いながら果たせ無かった為の自殺も多いのではないかと思います。先日教師が教え子に自殺されたことを語っているテレビを見ました。その方は数学の先生で、今の自分が存在するのは、十代遡るとして1024の命のバトンを受け継いだものであり、実に大事な命なのであり、そのうちの一人でも欠けたら私という存在は有りませんと訴えていました。そんな大切な命を自らの手で絶ってしまうという事は本当に悲しいことです。私自身の回りでも自殺してしまった友人がいますが、どうしてもっと悩みや話してくれなかったのかと自責の念に駆られます。情報過多で複雑怪奇な現代ですが、自殺を考える人が一人でも少なくなることを願うばかりです。他人と較べることから離れて今ある自分を考え、疲れた時は無理をせず周りのことは気にせずに、ゆっくりマイペースがよいのではないかと思います。
 今月は20日に春のお彼岸を迎えます。御先祖様のお陰で今の自分があることを自覚し、お墓参りで心を開放し、御先祖様に手を合わせて自身の手のぬくもりを感じてみてください。子孫の幸福をひたすら願う御先祖様の期待に応えて、自分の命を大事にいたしましょう。人には言えない悩みをご先祖様に打ち明けるのもいい心の休息になると存じます。
 冒頭に掲げた御遺文は、我々信仰者が如何にあるべきかを問い掛けています。奢らずに謙虚でいる事がとても大切でありまた難しい事であると感じます。

国柱会霊廟賽主 田中壮谷




真世界巻頭言


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