必武館道場訓に導かれて

2018年04月01日(日曜日)

 申孝園には、必武館と名付けられた剣道場があります。私は幼い頃からこの道場で鍛えられながら育ちました。私は物心が付くかつかぬうちに剣道を始めましたが、自発的と言い難く、当時館長を努めていた祖父の意向で、始めさせられたといった方が正しいかもしれません。剣道の練習は幼い私にとってとてもつらいことでした。時折さぼっては身を隠しましたが、すぐに見つかって連れ戻され、こっぴどく叱られました。しかし長じて、剣道をしていてよかったと感じるようになりました。私は、空手や合気道にも興味を懐いて少々かじりましたが、これらも、幼い頃の剣道の経験がもとになっております。この様な武道で、肉体が鍛えられたのは言うまでもないことですが、それ以上に鍛えられたのは精神でした。
必武館では道場訓が定められています。それは、
  至誠もって事にあたり、
  礼節もって人に対し、
  謙譲もって己を慎み、
  精進もって技を磨き、
  感謝を持って日を送る

といった五項目からなります。私の人生において、何かことに当たってこの五項目を想い起こします。私は高校を卒業してすぐにイギリスに留学しましたが、人生で初めての一人暮らしでホームシックに罹りました。それ以上に、同じ人間であるにも関わらず、日本人ということによって差別を受けました。しかし、武道を通じて得た精神力、とりわけ上記の道場訓によって、これらを乗り切る事ができました。いやでしかたなかった剣道の練習によって、この様な事に逃げずに立ち向かうことができたのです。根っからの弱虫で泣いてばかりいた幼少期のあだ名は、泣き虫小僧でしたが、自分の人間形成の根幹に必武館道場訓があった訳でございます。これからの人生においても、心を引き締め、初心にかえり、この道場訓の精神に立ち返りたいと思います。
 4月は年度初めの月です。新しい人生に転進される若い方々もおられると思います。このような方々にあやかって、私自身-、社会人一年目のフレッシュな気持ちに立ち返って、頑張りたく存じます。どうぞ皆様よろしくお願いし上げます。

国柱会霊廟賽主 田中壮谷



真世界巻頭言


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