法華を識るものは世法を得べきか

2018年12月01日(土曜日)

 平成の御代もいよいよ最後の師走を迎えようとしております。以前にも何度か申し上げましたが、平成の御代をふりかえると、自然災害からの復興といった事柄が脳裏をかすめ、天皇皇后両陛下はじめご皇室の方々の被災地への御慰問のご様子が思い興されます。まずもって天皇陛下の大御心に報謝しお祈り申し上げます。
 天皇陛下宝祚延久玉体聖慮御安康並び皇室御繁栄 南無妙法蓮華経
 さて、戦後、科学技術が進歩し、経済的には豊かになりましたが、その一方で、人間の心の有り方において、大切な物を過去に忘れてしまったのではないかと思えてなりません。仏教で説く「末法化」がますます進んでいると感じるのは、私のみでなく多く方もそうではないかと拝察します。大聖人は、「自行化他にわたるお題目」でなければならないと説かれていますが、自分の安泰を願うひとりよがりの信仰であってはならないと思います。『観心本尊鈔』には、「法華を識るものは世法を得べきか」と書かれていますが、法華を識るものは世法にも通じていなくてはいけないのです。信仰を通して、国内外を問わず人心を不安に陥れている様々な問題を、一人一人がよく認識して、その問題解決へと永続的な努力を続け、未来を切り開いていくことが求められます。人類発生以来幾度となく繰り返されてきた戦争の歴史に別れを告げなければなりません。世界が一体化することによって、人類の絶対的平和への光明が見えてきたようにも思われましたが、世界の情勢は、またしても危うい状況に向かっているのではないかと懸念される昨今です。加えて、権威に囚われて心の内面を共有できないうわべだけの人間関係が、益々社会を暗くしているのではないでしょうか。時には威厳も必要でしょうが、間違った威厳によって親子関係が崩れ、親殺し、更には、孫による祖父母殺しなどの悲惨な事件も起こっています。具体的な解決策として、私は、日本人の道徳教育に教育勅語を用いていただきたいと願っていますが、その意味からも明治の日の制定が重要であると考え、多くの同志のご協力を賜り請願活動を展開しております。
 信仰者は、とても心豊かであり、永続的な信仰に基づいて徳を積むことによって、無限の力を得ることができると私は信じています。威厳など、徳の前では無力です。本会の過去の歴史においても、排他的とも受け取られかねない、世間に誤解を招くような活動も多々あったと思います。そのような過去に決別して、新しい未来へ向けて、時を習って機を見る柔軟さが今本会にも、ひいては全世界にも求められているのではないでしょうか。お釈迦様、大聖人、恩師のお言葉を用いて威厳ぶっていても何も変わらないのであります。お言葉をよく身に読み、自身で咀嚼して、経験に照らし合わせて人を見て法を説く事が重要であると思います。知識を得ることで満足していても意味がないのです。知識とは人より優位に立つ為の物ではなく、人を救う為のものでなければならないのです。人それぞれ多かれ少なかれ悩みを抱えています。共業の解決こそ我々の祈りであり、どのように時が移ろっても我々の願業は変りません。しかし時に応じて方法は変えなくてはなりません。恩師田中智学先生の八十遠忌を迎えたこの年に、悪しき過去を清算し、ここに新たな御代を迎える明年は、心新たに現代における立正安国運動を展開致しましょう。同志の皆様がより良い年を迎えられますことを心よりお祈り申し上げます。
南無妙法蓮華経

国柱会霊廟賽主 田中壮谷



真世界巻頭言


ページの先頭へ