知恩報恩

2019年12月01日(日曜日)

 御代がわりの令和元年も早くも師走となりました。先月は、大嘗祭をもって践祚の儀からはじまった即位礼正殿の儀、今上陛下の御即位にまつわる一連の儀式が無事に成満されました事を心よりお喜び申し上げます。
 さて師走を迎え、つくづく時の移ろいの速さを感じますが、皆様いかがでしょうか。年末は気の焦りから事故などが増えると聞きますが、どなた様におかれましても、十分気を引き締め、健康にも留意して充実した日々を過ごされ、新しい年を迎えられることを願っております。今年は、私事ながら母の十三回忌法要を営み、改めて母との思い出に浸る機会を得て、母のありがたさを噛みしめました。どこの親御さんも子供を思わない方はないと思います。私が自動車の運転免許を取得したての頃、車で出かけ帰りが晩くなるようなことがあると、帰ってくるまで心配で眠れないと言っていたのを思い出します。どこの親御さんも、私の母と同様、子供の無事を祈りながら帰りを待っておられると思います。免許を取得したばかりの若い世代の方々も、自分一身に気を配るのみではなく、無事を祈る親の気持ちにも心を向けて、十分気を付けて運転して頂きたいと思います。
 仏教では、極めて重要な教えとして「知恩報恩」が説かれていますが、日頃の生活の中で、様々な形で受けている恩恵を知ること、そしてその恩に報いることが大切だと思います。その意味では、今は亡き親も含めて、親に心配を掛けない行動をすることも報恩行のひとつだと思います。更には、親の願いをよく知り、その願いを受け継ぐことが大事だと思います。私達は日蓮聖人から「世を安んじ国を安んずるを忠と為し孝と為す」と教えられていますが、親の本当の願いは、やはり世を安んじ国を安んじることだと思います。この親の願いを自分自身の願いとして、今自分に何をできるかを考え、その実践に取り組み、心の豊かな人生を共に生きていきましょう。
 来年は、東京でオリンピックが開催されます。都内では、様々なインフラの整備が進み、町全体で活気がみなぎっているような感じがいたします。多くの海外の旅行者が日本を訪れて来ると思います。日本の良き伝統文化を世界に伝える千載一遇の機会であります。私は、様々な形で形成された日本の伝統文化の根底には、「知恩報恩」の考え方があると思います。更に言えば、「知恩報恩」に心がけて生きることこそ、人間同士のつまらない争いをなくする鍵ではないかと信じています。世界の人々にこのことを知ってもらうためにも、私自身率先して、知恩報恩の心をモットーとして世界の様々の方々と接したいと考えているところです。

国柱会霊廟賽主 田中壮谷



真世界巻頭言


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