新年に向けて一年を憶う

2007年12月31日(月曜日)

以前にも本誌主論で、勝ち組、負け組のことを話題にしましたが、ほとんどの人々が、勝ち組になりたいと意識し、その事を主眼において価値を見出す、といった人生を送っているように思われます。勝った人はそれで満足なのでしょうか。

私はある人から、議論に勝とうとするな、議論に勝つことばかり考えていると本当に伝えたい事が伝わらない、と言われたことがあります。まったくその通りだと思いました。以前に、議論に勝つことばかり考えていた頃がありました。一時の優越感を得ることは出来ましたが、相手を説得することにこだわって、本当に伝えたかったことが別の内容に変わってしまったことを思い出します。その時に感じた何とも言い難い虚しさがときおり脳裏に浮かんできて、勝負にこだわることの愚かさから解放されなければと自戒しています。

人生において一番大事な事は何か、そして、人生の真の目的は何か?自己中心的に、他の人との比較ばかりにとらわれていても答えが出てこないと思います。年の瀬に一年を憶い起こしながら、問い糺す必要を感じています。

世間を見ていますと、常に自分を優先している人が大勢います。横断歩道は歩行者優先であるにもかかわらず、歩行者を蹴散らして我先に進もうとする。このため、横断歩道での幼児の巻き込み事故が後を断ちません。救急車のサイレンの音を聞いても道を譲らない、身体が不自由な方のための駐車スペースに平気で駐車する、といった人々もたくさんいます。これらは、道路交通法という法律があるからしてはいけないのではありません。それぞれが自己中心的な考え方を棄てて、互いに他の立場に思いを馳せて考えれば、当然気をつけなければならないことです。この様なことは、欧米社会ではありえないことで、非常に恥ずかしいことです。

日本には、和を貴び、互いに譲り合いながら、みんなが幸せになる社会を築くために協力しあってきた歴史があります。我々の根底には、欧米文化にまさる非常に素晴らしい伝統があり、いまは埋もれているだけです。よい社会をつくるためにも、この伝統を掘り起こし、むしろ、我々が欧米社会を引っ張って行かなくてはならない使命があるのです。

つねに、本当になすべきことは何か、といった問題意識をもって、良いと思ったことは、簡単なことからでも即実行しましょう。
来年は、妙宗大霊廟創建八十周年の佳節の年と共に恩師田中智學先生の第七十回忌報恩大会の年であり、共に一層大きく飛躍をいたしましょう。



真世界巻頭言


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