『報恩抄』を拝読して

2023年07月03日(月曜日)

夫れ老狐は塚をあとにせず、白龜は毛寶が恩を報ず。畜生すらかくのごとし、いはうや人倫をや。されば古の賢者豫讓といひし者は劍をのみて智伯が恩にあて、弘演と申せし臣下は腹をさひて衞の懿公が肝を入たり。いかにいわうや佛教を習はん者父母師匠國の恩をわするべしや。此の大恩を報ぜんには必ず佛法を習ひきはめ智者とならで叶ふべきか。
                                           『報恩鈔』(『類纂高祖遺文録』)より

 お釈迦様は、親に対して人生の意義を伝える事が一番の孝行であり、妻や子供にたいしても、一番の慈悲はまた同じことであると感じて、若くして出家されました。その後厳しい修行を重ねて悟りを得て、故郷に
帰り家族達に人生の意義を説いたのであります。
 お釈迦様みずから「恩を知り恩に報いるものは仏に過ぐるもの無し」と言われております。同志の皆様は「四恩」という言葉を耳にした事があると思います。「父母の恩、一切衆生の恩、国の恩、三宝の恩」この恩を受けない人はいないのです。大聖人が父母の恩に報いるために、身延山五十丁の険しい道のりを毎日登られた事は、以前書かせていただきましたが、大聖人は「仏法を学せん人、知恩報恩なかるべしや。仏弟子は必ず四恩をしって知恩報恩をほうずべし」とも述べられています。そして、大聖人が恩師の恩に報いるために法華経がもっとも尊い教えだという事を明らかにする為に書かれたのが『報恩鈔』と教えられています。その『報恩鈔』を恩師の墓前でお読みになられたという事が伝えられています。
 子として当然親に尽くすべき事を尽くし、親として子に対してできる限りの慈悲を尽くす事は、当たり前のことでありますが、人間の一生は、長いようで短いものであります。しかしお釈迦様、大聖人が説いている御教えは、人間の関係は現世のみの繋がりだけではないということです。三世という深いご縁がある事を教えていただいております。『報恩鈔』には、狐は死ぬとき、自分が育ったふるさとの丘の方に首を向けて死ぬと記されています。動物ですら恩を忘れずに死ぬときに報恩の心を示しています。人間なら尚更恩を忘れてはならいという事であります。 
 さて、そこで四恩に報いるには?ということですが、大聖人は、清澄で虚空蔵菩薩に「日本第一の智者になりたい」と祈られて、遊学研鑽を経て法華経が最勝であると確信され、その功徳をもって四恩に報いたいという誓願をたてられたのです。恩に報いる為にこれからも正しい教え法華経を、学び弘めて誠の報恩を実践したいものです。これからも報恩の為に共に異体同心でお題目を唱え仏道増進して参りましょう。

国柱会霊廟賽主 田中壮谷




真世界巻頭言


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