東日本大震災被災地釜石を久しぶりに訪ねて

2013年12月04日(水曜日)

 東日本大震災に対し当初にボランティア活動をさせていただいた釜石を、久しぶりに再訪問することになりました。今回の主な目的は、同志の方が引越しをされるのに際して、ご本尊の御遷座式を行うためです。10月26日から27日にかけて行われました身延大祖廟輪番給仕から帰園して、翌日正中法座を終えてから、新しい御寶壇および先日御開眼式をいたしました御本尊様に同道して、釜石を目指して車を走らせました。車中、当初に釜石へ行った時のさまざまな出来事が思い起こされました。最初に釜石に着いたときには、その悲酸な状況に、言葉や文章ではとても伝えられない恐怖感に身を包まれ、そのショックで足が竦んだことを昨日の事の様に思い出されました。その釜石が現在どのようなになっているのだろうか、きっと復興が進んでいることであろうと期待を持ちつつも、正直なところ、不安な気持ちでいっぱいでした。
 復興が遅れる原因の一つに、交通網の問題があると思います。前回に釜石を訪ねたときは、東北道から沿岸被災地域へは、少なくとも二時間以上かかる山の中の一本道を走っていかなくてはなりませんでした。距離は百キロ程度なのですが、片側一車線の細い道なので中々スムーズには着く事が出来ませんでした。復興を促進するに当たっては、交通網の問題は重要な課題の一つだと思います。前回の釜石訪問は、確か福島の警戒区域が解除になる前なので、去年の二月か三月のことだったと思いますが、その後一年半以上は経っています。復興が進んだとは決して言えない状況ですが、今回釜石へと車を走らせながら、ともかくも、復興を進める為に一生懸命に今インフラを整えているのだと気づかされました。日本の力には驚かされます。東北道から童話で有名な遠野市まで高速道路が出来ていました。お陰で時間が半分位に短縮することができました。今後、この高速道路により人的交流が盛んになり、本当の意味での復興がなされることを願ってやみません。
 いざ釜石に着きますと、私がボランティアに参加し瓦礫を片付けたりしていた時に比べると、町全体が光に溢れているように感じられ、目頭が熱くなりました。しかし、完全な復興には程遠く、まだまだ問題が山積しています。実際の被災を経験していない私なんかが感傷に浸っているだけでは、事態は何も好転せず、皆様の胸中を考えるととても複雑な思いで一杯になるばかりです。その様な私の心を察してか、皆様は笑顔で色々な事に話題を振ってくださいました。温かい心づかいにこの場をかりて御礼申し上げます。
 末筆ながら、被災して亡くなられた多くの方々の菩提増進を心よりお祈り申しあげますと共に被災された方々に心からお見舞い申し上げます。

国柱会賽主 田中壮谷




真世界巻頭言


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